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2024年05月1日 |ホームページを更新しました。
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2024年05月1日 |新しい「よく噛んで生きよう。」の動画ができました。
こちらからご覧ください。
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チューインガムの発祥は西暦300年ごろ(日本の大和時代末期ごろ) メキシコ南部からグァテマラ、ホンジュラスなどの中央アメリカに 住んでいたアステッカ族マヤ族にその源を求めることができます。 当時、同地方一帯にサポディラと呼ばれる巨木が生えていましたが 住民はこの木の樹液のかたまりを噛む習慣を持っていました。 この樹液のかたまりがチクルと呼ばれ今日のガムの元祖となりました。
繁栄を誇ったマヤ文化は西暦800年ごろ(奈良の大仏が完成したこ ろ)を頂点として衰退していき、16世紀(日本の種子島に初めて 鉄砲が伝来したころ)スペインが同地方を征服したころには、ほと んど姿を消してしまいました。しかし、私たち人間の「咀嚼本能」 に根ざすチクルを噛む習慣だけはメキシコインディオに引きつがれ、 さらにスペインの侵略後には、スペイン系移民の間にも広がってい きました。
西暦1860年(幕末のころ)アメリカとメキシコの戦争で活躍した、 サンタ・アナ将軍がチクルからゴムを製造しようと考え失敗しまし た。しかし、素敵な噛み心地と歯を白くする性質に気づいた将軍は、 甘味料などを加えないチクルを飴玉状にして売出しました。その後、 将軍の協力者が甘味料を加えアメリカで売出し爆発的な人気を得た のち、ハッカやニッキなどが加えられ世界に普及していきましたハ ッカやニッキなどが加えられてガムは全世界に普及しました。
日本にチューインガムが初めて輸入されたのは大正5年で、昭和3年 ごろマサキガム、新高製菓などが国産ガムの製造販売をしました。 しかし、当時の食習慣などに合わず、あまり売れませんでした。日 本で初めてのガムの広告第2次大戦中、アメリカ軍の携帯食糧にチュ ーインガムがありました。昭和20年の終戦と同時にアメリカ軍のチ ューインガムは、新しいファッションとして急速に日本人の間に浸 透し、生活の洋風化とともに愛好者を急増させました。
植物性樹脂 | 植物性樹脂は中南米、東南アジアの一帯に野生し、植物分類学上「アカテツ科」、「キョウチクトウ科」、「クワ科」、「トウダイグサ科」に属する樹木から採取される樹脂をいい、代表的なものにチクルがあります。採取は、幹の下から頂上へV字型に溝をつけ地上1メートル位のところに容器をつけ、樹液を集めます。この樹液を煮つめた淡褐色のかたまりがガムベースの原料となる植物性樹脂です。 |
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酢酸ビニル樹脂 | 1912年にドイツで開発された無色透明、水に溶けない、無味無臭の樹脂です。チューインガムに使用されている酢酸ビニル樹脂は、食品衛生法の厳しい規格基準にもとづき製造されています。この樹脂は、軟化して快い噛み心地をもつガムベースの原料となり、また安全性は、各種の試験により確認されています。 |
エステルガム | 噛み心地をよくするために使用されます。各種の試験により、その安全性は確認されています。 |
ポリイソブチレン | ガムベースに弾力性をだすために使用されます。共に各種の試験で安全性は確認されています。 |
炭酸カルシウム | チューインガムのカルシウム強化と長くかんだ場合のだれを防止するため使用されます。 |
糖原料(甘味原料) | 糖原料として砂糖、ブドウ糖、水飴などが使用されます。最近はマルチトール、キシリトールなどの甘味原料も使用されます。 |
軟化剤 | ガム全体を軟らかく、噛み心地を良くするために使用します。軟化剤は水、グリセリンなどで、食品衛生法のきびしい試験に合格したもののみが使用されます。 |
香料 | チューインガムの香料は天然植物精油が主体です。最もポピュラーな香料のミント系香料にペパーミント(西洋ハッカ及び日本ハッカ)とスペアミント(オランダハッカ)があり、それぞれの植物を水蒸気蒸留して抽出した植物精油です。またレモン、オレンジなどの柑橘系香料も果物から抽出した植物精油です。 |
ペパーミント | ペパーミントと言われて、まず思い出すのはチューインガムの味ではないでしょうか。 ペパーミントの香りを嗅いだだけでも、頭がはっきりするような気がします。ペパーミントの気分を引き立てリフレッシュさせる効能は、ずいぶん昔から知られていて、16世紀の薬草の本にも「その香りは人を喜ばせる」と書かれていたほどです。 1880年にペパーミントガムが発売されて人気をえて以来、かくし味も含めてペパーミントはガムの味の基本のひとつとなりました。 現代になっても、もっとも人気のあるガムの味です。 |
噛むことの大切さをあらためて考えていただきたいと、日本チューイングガム協会が 平成6年6月より毎年6月1日を「チューインガムの日」に制定いたしました。 6月1日の「チューインガムの日」に、チューインガムを通じて噛むことの大切さ、 健康の大切さ、そして現代におけるマナーの重要性を 一人でも多くの人にみつめ直していただきたいと考えております
チューインガムは商品の特性上、形や他の食品との組み合わせなどによりさまざまなものができ、さらにこれに香りや味つけのちがいを含めるとその種類は無限とさえいえます。
※このほかに、チューインガムとジャム、キャンディ、粉末状のものなどを組合わせたものがあります。
チューインガムの味の分類には、代表的なミント系とフルーツ系がありますが、その他にスパイス系やコーヒー、コーラなどの飲料の味もあります。
ミント系 | ペパーミント スペアミント |
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フルーツ系 |
オレンジ・レモン アップル・メロン チェリー・プラム グレープ・ラズベリー ストロベリー |
スパイス系 | シナモン リコリス その他 |
その他 | コーヒー コーラ 緑茶・紅茶 ワイン |
甘味料は、砂糖、ブドウ糖を中心とした「シュガータイプ」とマルチトール、キシリトールなどを使用した「シュガーレスタイプ」に大別されます。
モノをよく噛む習慣
唾液を分泌し消化を促進
ホルモン分泌で老化防止
刺激による脳の活性化
頭の回転をよくする
歯根の強化
顎の発達
神奈川県下の小学生低学年児童を対象に、学校給食を食べるときの噛む実態調査をしたところ、 噛む機能が驚くほど低下している児童たちの実態が明らかになりました。食生活が柔らかい食べ物に 偏りよく噛んで食べる習慣を失った子供たちに、噛む食生活環境への急速な改善が必要と警告しています。
3つのグループに分けられる児童
小学生低学年4人に3人は 噛まない噛めない子供たち
噛まない原因は柔らかい メニューと牛乳で流し込み食い
現代人の「顎」に赤信号。よく噛むことを忘れた食生活が、卑弥呼から現代人までの復元食実験で証明されました。「噛む」ことは、口の中を清潔にして歯や顎の組織の新陳代謝を高め、からだ全体を健康に保つ大切な働きがあります。
各研究機関においてチューインガム咀嚼の効果検証が多く実施されています。
仕事や日常生活においてチューインガムを噛むことにより、ストレスが低減されることが確認されており、Smithら (2012)[1]は、 72名の学生に対して、2週間、チューインガム咀嚼の有無で、ストレス度合い、不安、うつ、仕事量と疲労度合いを評価した結果、ストレス度合いはガムの摂取量に伴い減少することが認められました。Smithらは他にもチューインガム咀嚼によるストレス低減効果を確認する介入試験を実施しており、カーディフ大学の101人の被験者を対象として、14日間のチューインガム摂取(最低で2粒/日を20分間)の介入試験を実施し、ストレス感、不安感、落ち込み度合などをアンケート調査した結果、チューインガムガムを摂取することで仕事中のストレス、日常生活のストレス、疲労、不安、落ち込みが減少されることを確認しました(2012)[2]。また、126名を対象に、チューインガム咀嚼と仕事上のストレス等についての介入研究を実施しており、チューインガムを1日間、10粒咀嚼することにより、仕事上のストレス・疲労感・不注意・仕事の滞り・認知上の問題の各スコアが有意に低下することが確認されています(2013)[3]。さらに、Smithらはチューインガム咀嚼に関する調査研究も実施しており、388名の就労者を①チューインガムを全く食べないグループ、②週に1回程度は食べるグループ、③週に5回から1日に1回は食べるグループに分け、アンケート調査を行った結果、チューインガムをよく食べる人ほど、仕事上と生活上のストレスが少なく、不安感・落ち込みも少ないことが分かりました(2013)[4]。
国内でも、チューインガム咀嚼による仕事におけるストレス低減効果を研究した例もあり、Sakanoshitaらは(2020)[5]、百貨店従業員346名を対象に、1日4回、6週間のチューインガム咀嚼によるストレス低減効果の検証についてHADS尺度を用いて行った結果、チューインガム咀嚼することにより、うつ度合が低減することが確認されました。また、Sasakiらは(2011)[6] 、被験者50名に対して、チューインガムを1日に2回、1回5分以上、14日間噛んだ際に、STAI法、POMS法で評価した結果、チューインガム咀嚼した場合、対照群と比較して不安感、抑うつ・落ち込み、疲労、混乱、精神的な疲労が有意に低下することが確認されました。
実験室レベルで、チューインガム咀嚼のストレス低減効果を検証した例を以下にご紹介いたします。
Scholeyらの実施した研究(2009)[7]では、被験者40名(平均21.98歳)に対してPCを利用したマルチタスク作業を行わせてストレス負荷をかけた際、チューインガムを噛んだ場合と噛まない場合で主観的なストレス(VAS)、唾液中のコルチゾール(ストレス状態だと分泌量が多くなると言われています)を評価しました。その結果、ガムを噛むとストレス度合が減少し、コルチゾールも少なくなるうえ、タスクのパフォーマンス向上も認められました。また、Soedaらの研究(2012)[8]でも、20名の健常男性を被験者として、作業(算術計算テスト)を行った後にチューインガムを噛んでもらうことにより、唾液中コルチゾールが減少することが認められています。
プレゼンテーションなど、人前で発表する機会はストレスがかかりますが、チューインガムを噛むことによりストレスが低減することが検証されています。Sketchley-Kayeらの研究(2012)[9]では、36名の被験者に対して10分間のプレゼンテーション負荷をかけた際、チューインガムを噛むことにより自覚的な覚醒が増加する一方、自覚的な不安が低減することが認められました。
チューインガムを噛むことにより、騒音ストレスが軽減されることも研究されており、Kamiyaらは(2010)[10] 、10名の被験者に20分ノイズ刺激を与えた際のチューインガム咀嚼によるストレス低減効果をNiRS脳計測装置により評価しました。その結果、侵害屈曲反射が抑えられる事、血中セロトニン(5-HT)濃度が上昇することより、ストレスが抑えられる事が示唆されました。Yuらは(2013)[11]、ノイズストレス負荷中のチューインガムガム咀嚼有無による影響をfMRI測定により評価しています。チューインガム咀嚼により①上側頭溝と島皮質の活性低下、②島皮質と前帯状皮質の連携が低下、③上側頭溝から島皮質への伝搬を阻害することが示され、チューインガムを噛むことによってストレスに起因するネットワークの伝搬が阻害されることが示唆されました。Konnoらは(2016)[12]、 11名の被験者を対象に、30秒のノイズ下において測定を行ったところ、チューインガム咀嚼した際、ガムなしと比較して前頭前皮質(PFC)活性、α派、心拍数の上昇、VAS評価上昇、STAIスコア低下となり、ストレス低減効果が確認されました。
現在もチューインガム咀嚼によるストレス低減効果の研究は活発になされており、今後も様々な報告が挙がってくることが期待されます。
【引用文献】
[1] Smith AP et al. Effects of chewing gum on the stress and work of university students. Appetite. 2012; 58: 1037-1040.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22402304
[2] Smith AP et al. Chewing gum, occupational stress, work performance and wellbeing. An intervention study. Appetite. 2012; 58: 1083-1086.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22390954
[3] Allen AP et al. Chewing gum: cognitive performance, mood, well-being, and associated physiology. Biomed Res Int. 2015; 2015: 654806.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4449949/
[4] Smith AP. Effects of chewing gum on stress and health: a replication and investigation of dose-response. Stress Health. 2013; 29: 172-174.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22496105
[5] Sakanoshita N et al. I. Chewing gum reduces stress among department store employees. Jpn Pharmacol Ther. 2020; 48: 31-38.
http://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/48010/31
[6] Sasaki-Otomaru A et al. Effect of regular gum chewing on levels of anxiety, mood, and fatigue in healthy young adults. Clin Pract Epidemiol Ment Health. 2011; 7: 133-139.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21866229
[7] Scholey A et al. Chewing gum alleviates negative mood and reduces cortisol during acute laboratory psychological stress. Physiol Behav. 2009; 97: 304-312.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19268676
[8] Soeda R et al. Influence of chewing force on salivary stress markers as indicator of mental stress. J Oral Rehabil. 2012; 39: 261-269.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22040229
[9] Sketchley-Kaye K et al. Chewing gum modifies state anxiety and alertness under conditions of social stress. Nutr Neurosci. 2011; 14: 237-242.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22053754
[10] Kamiya K et al. Prolonged gum chewing evokes activation of the ventral part of prefrontal cortex and suppression of nociceptive responses: involvement of the serotonergic system. J Med Dent Sci. 2010; 57: 35-43.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmds/57/1/57_570105/_article/-char/ja
[11] Yu H et al. Gum chewing inhibits the sensory processing and the propagation of stress-related information in a brain network. PLoS One. 2013; 8: e57111.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0057111
[12] Konno M et al. Relationships between gum-chewing and stress. Adv Exp Med Biol. 2016; 876: 343-349.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26782231
チューインガムを噛むことで脳血流が増加するとの研究結果は複数報告されています(2004)[1],(1994)[2] 。これらの研究においてチューインガムを咀嚼することで頸動脈の血流や酸素摂取量などが増加することが明らかにされています。
また、チューインガムを食べることが記憶力にどのような影響があるのかを評価した研究があります(2008)[3]。この研究では、fMRIという脳活動を計測する装置を用いたワーキングメモリーテスト(短時間の記憶力を測るテスト)でガムの効果を評価しています。ガムを噛まないとワーキングメモリーテストの正解率が低下していく傾向が認められますが、ガムを噛むことでテストの正解率が回復することが報告されています。
さらに、チューインガムを食べることが注意力にどのような影響があるのかを評価した研究があります(2013)[4]。この研究でも、先ほどの研究と同様にfMRIという脳活動を計測する装置を用いて注意力を評価しています。ガムを噛むことで注意ネットワークが活性化し、判断速度が向上することが報告されています。
【引用文献】
[1] 志賀ら. 近赤外分光装置によるチューインガム咀嚼時の脳内血流の変化. 日本咀嚼学会誌. 2004; 14(2): 68-73.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshaku1991/14/2/14_2_68/_article/-char/ja/
[2] 鈴木ら. チューインガム咀嚼時総頚動脈血流量、酸素摂取量、心拍数および血圧反応に及ぼすガムの硬さの影響. 日本咀嚼学会雑誌. 1994; 4(1): 51-62.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshaku1991/4/1/4_1_51/_article/-char/ja/
[3] Yoshiyuki H et al. Effects of chewing in working memory processing. Neuroscience Letters. 2008; 436(2): 189-192.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18403120/
[4] Yoshiyuki et al. Effects of chewing on cognitive processing speed. Brain and Cognition. 2013; 81: 376-381.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23375117/
チューインガムを噛むことにより、眠気防止、覚醒効果があることが、各種眠気を誘うシチュエーションを用いて検証、確認されています。
①自動車運転時の眠気:遠藤らは(1982)[1]、高速道路の運転に熟練した20~30歳代の男性2名を被験者として検証を行いました。午後11時に東京近郊の市街地を出発して、午前0時~3時の3時間、東京IC~静岡IC間の162km、高速道路を運転してもらいました。途中、高速の乗り口、サービスエリア2カ所の計3か所で停車して、その都度チューインガム(カフェインなどを含まない市販品)を5分間噛んでもらいました。対照実験では、停車時にチューインガムを噛みませんでした。同一の被験者でガム咀嚼の有無の計2回、1週間の間隔をあけて運転してもらいました。ガム咀嚼の有無で眠気の違いを比較するため、運転中の瞬き回数を測定しました。瞬きの回数は眠気が強いと増えることが知られています。右眼の上下に電極を貼り付け、瞬きによる電位変動を測定して評価しました。結果、チューインガムを噛んだ場合、瞬き回数の増加は軽微でしたが、チューインガムを噛まなかった場合、運転開始前半から著しい増加が認められ、 3時間後には運転開始時の約2倍の瞬き回数となりました。結果より、チューインガムを噛むことにより、運転中の眠気が軽減することが認められました。
②授業中の覚醒度合:投石らは(1993)[2]、大学の心理学の授業を受講している生徒54名を対象に、授業開始30分後に、受講中の生徒半分にチューインガムを噛むように指示し、5分経過した時点で、質問紙検査UMACL自己報告式気分チェックリストを用いて覚醒度合をアンケートした結果、チューインガムを噛んでいる生徒のほうが、エネルギー覚醒、快感度が有意に高いことが認められました。加えて、チューインガムを噛んでいる生徒のほうが、緊張覚醒が低くなり、神経質でなく、不安が低い結果となりました。
③単純作業時の覚醒度合:青木らは(2001)[3]、男子大学生5名を対象に、内田クレペリン作業を参考に作成した一位数加算作業を90分間連続で実施する試験を行いました。作業60分、70分、80分の時点でそれぞれ2分間ずつチューインガムを噛んだ結果、脳波では、覚醒時に出現するα(アルファ)波の低下が抑制され、覚醒レベルの低下の抑制が認められました。加えて、チューインガムを噛むことにより、自律神経系の緊張指数である心拍数変動についても低下が抑えられたうえ、作業量の増加も確認されました。単純作業時の意識レベルの低下が、チューインガムを噛むことにより抑制されることが実験的に確認されています。
④日中の眠気:Johnsonらは(2012)[4]、11分間暗室に居る際、チューインガムを噛む条件、噛まない条件で、瞳孔の単位時間あたりの変動(PUI: Pupillary Unrest Index)と自覚的な眠気(SSS: Stanford Sleepiness scale)を比較した結果、PUIとSSSの増加が抑えられることが確認され、チューインガムを噛むことにより日中の眠気が抑えられることが認められました。
⑤深夜の眠気:Hodobaらは(1999)[5]、64名の学生を対象に、夜22時から朝7時まで起きてもらい、深夜0時から試験時間終了までチューインガムを噛んでもらう群(21名)と噛まない群(43名)で、SSSアンケートを用いて眠気の調査をしました。その結果、チューインガムを噛むことにより眠気が抑えられ、特に、深夜1時と4時に測定した際に差が顕著となりました。看護師や技術者など、深夜に作業をするプロフェッショナルに対して、深夜時間帯に起きていてもらい、どうしても眠気が耐えられなくなった時点でチューインガムを噛む群(60名)と、15分間立って歩く群(27名)を比較した結果、チューインガムを噛んだ群で顕著にSSSアンケートの点数が低くなり、眠気が抑制されていることが認められました。このことより、チューインガムを噛むことにより、深夜起きている際の眠気が、プロフェッショナルの有無にかかわらず抑制されることが認められました。
【引用文献】
[1] 遠藤ら. 自動車運転中の"ねむ気"防止に関する実験的研究. 交通医学 1982; 36(3): 195-204.
https://ci.nii.ac.jp/naid/40001236389
[2] 投石ら. ガム咀嚼が自覚的覚醒度に及ぼす効果. 日本咀嚼学会雑誌. 1993; 3 (1): 23-26.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshaku1991/3/1/3_1_23/_article/-char/ja/
[3] 青木. 単調な神経感覚的作業におけるチュウインガム利用による作業者の覚醒効果に関する研究. 日本交通科学協議会誌. 2001; 1(1): 45-51.
https://ci.nii.ac.jp/naid/10013404313
[4] Johnson AJ et al. The effect of chewing gum on physiological and self-rated measures of alertness and daytime sleepiness. Physiol Behav. 2012; 105(3): 815-20.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22061430
[5] Hodoba D. Chewing can relieve sleepiness in a night of sleep deprivation. Sleep Res Online. 1999; 2(4): 101-5.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11382890
チューインガムを噛むことが唾液の分泌に及ぼす影響については、イギリスのSimonsらが研究結果を報告しています(2002)[1]。この研究では、クロルヘキシジン配合ガム摂取群、キシリトールガム摂取群、コントロール群(ガムを噛まない)の3群での比較を行っています。ガムを噛む2つの群では、ガム2粒の15分間咀嚼を1日に2回行ってもらいました。その結果、キシリトールガム摂取群とコントロール群の唾液分泌量を比較するとキシリトールガム摂取群の唾液分泌量が有意に高くなることが報告されています。
また、ユーカリ抽出物配合チューインガムが口臭に及ぼす影響(2010)[2]及び歯周病に及ぼす影響(2008)[3]についての研究を紹介します。
ユーカリ抽出物配合ガムを12週間、1日に5回、1回あたり2粒を5分間咀嚼してもらったところ、ユーカリ抽出物を配合しないガムを同様に食べた場合と比較してVSC量(揮発性硫黄化合物の略。口臭の原因となる物質。)が有意に低くなるという結果が報告されています。
同じ条件で、歯垢の蓄積を評価した結果、ユーカリ抽出物配合ガムを食べることで歯垢の蓄積が有意に少なくなるという結果が報告されています。
【引用文献】
[1] Debra S et al. The Effect of Medicated Chewing Gums on Oral Health in Frail Older People: A 1-Year Clinical Trial. J Am Geriatr Soc. 2002 Aug; 50(8): 1348-1353.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12164990/
[2] Muneo T et al. Effect of Eucalyptus-extract chewing gum on oral malodor: A double-masked, randomized trial. J Periodontol. 2010 Nov; 81(11): 1564-1571.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20594055/
[3] Hideki N et al. Effect of Eucalyptus-extract chewing gum on Periodontal Health: A double-masked, randomized trial. J Periodontol. 2008 Aug; 79(8): 1378-1385.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18672986/
チューインガムを1日に数回、2週間~3ヵ月程度継続して噛むことによって、咬合力が向上することが、近年の研究で明らかになってきています。
小児を対象にした研究では、小野ら(1992)[1]により、4歳から5歳までの幼児10名で、1日2回、5分間ずつチューインガムを噛む訓練を3か月間継続することにより、咬合圧センサー値が訓練開始時17.6±2.55kgfから34.2±1.96kgfに上昇することが確認されています。また、根岸ら(2008)[2]により、乳歯と永久歯が生え変わる混合歯列期(Hellmanの歯齢III B~III C)の13名 (女性9名、男性4名、平均年齢10.5歳)を対象に、硬性ガムによる1ヶ月間の咀嚼トレーニング(1日2回で各10分間)を行いました。咀嚼トレーニング前後で最大咬合力、ならびに、口唇閉鎖力が有意に増加することが確認されており、咀嚼トレーニング終了1ヶ月後においても効果が維持されていました。さらに、Ohiraら(2012)[3]により、幼稚園児70名(平均年齢5.4歳)に対して、1日2回5分間ガム咀嚼トレーニングを実施した結果、対照群28名(平均年齢5.3歳)と比較して、オクルーザルフォースメーターによる咬合力測定結果と、咀嚼チェックガムを用いたガム色変わり度合について、トレーニングした被験者では4週間後に有意に咀嚼機能が向上し、訓練終了4週間後も効果が持続していることが認められました。
成人を対象とした研究では、Masumotoら(2009)[4]により、健康な成人35名(男性26名、女性9名)に対して、1日3食前後に3回、各10~15分ずつ、4週間のガム咀嚼トレーニングを行った結果、期間後に、デンタルプレスケールによる咬合面積と咬合力の値が有意に増加することが認められました。尚、咬合力については、トレーニング前が平均で1172.5±83.6Nだったのに対して、トレーニング期間後は1367.4±79.5Nとなりました。また、Shiraiら(2018)[5]の研究では、顎口腔機能異常を認めない個性正常咬合者19名(男性7、女性12、平均25.4±4.3歳)に対して、1日2回、各5分間のガム咀嚼トレーニングを4週間行い、オクルーザルフォースメーターを用いて最大咬合力を測定した結果、平均で22.6%の咬合力上昇が確認されました。
高齢者を対象とした研究では、Nakagawaら(2017)[6]により、口腔乾燥を引き起こす薬を服用していない地域在住の高齢者12名(男性3名、女性9名、平均77.8±4.6歳)に対して、1日2回(朝と午後)5分間ずつ、ソフトガム、ハードガムをそれぞれ2週間ずつ、間に2週間の休息期間を設けて摂取してもらった結果、両方のガムを使った検証において、安静時唾液が有意に増加し、デンタルプレスケールによる咬合力が有意に増加しました。中澤ら(2018)[7]の研究では、健常な後期高齢者30名(男性9名,75~89歳,女性21名,75~89歳)を対象に、1日3回30日間実施ガム咀嚼トレーニングを実施した結果、咀嚼チェックガムの色変わり度合が有意に向上することが確認されました。
幼児から高齢者まで、幅広い年齢層において、チューインガムを一定期間噛むトレーニングを継続することにより、咬合力が向上することが確認されております。
【引用文献】
[1] 小野ら. 幼児の咬合力増加訓練に関する研究. 口病誌 1992; 59(2): 512-517.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/koubyou1952/59/2/59_2_512/_article/-char/ja/
[2] 根岸ら. 硬性ガム咀嚼トレーニングが混合歯列期児童の咀嚼能力に及ぼす影響. Orthod Waves -Jpn Ed 2008; 67(3): 132-138.
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007008440
[3] Ohira A et al. The effect of chewing exercise in preschool children on maximum bite force and masticatory performance. Int J Paediatr Dent. 2012; 22(2):146-53.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21781200/
[4] Masumoto N et al. Daily chewing gum exercise for stabilizing the vertical occlusion. J Oral Rehabil. 2009; 36(12): 857-63.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19845836/
[5] Shirai M et al. Effects of gum chewing exercise on maximum bite force according to facial morphology. Clin Exp Dent Res. 2018; 4(2): 48–51.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29744215/
[6] Nakagawa K et al. Effects of gum chewing exercises on saliva secretion and occlusal force in community‐dwelling elderly individuals: A pilot study. Geriatr Gerontol Int. 2017; 17: 48–53.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/ggi.12670
[7] 中澤ら. 咀嚼能力の維持・向上を期待した簡便なトレーニング. 老年歯科医学. 2018; 33(2): 63-69.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg/33/2/33_63/_article/-char/ja/
厚生労働省の歯科疾患実態調査(1999-2017)[1]によると、虫歯を経験した10-14歳のお子さんの割合は、平成11年に69.7%であったのに対し、平成28年では19.7%となり大幅に減少傾向を示しています。一方で、12-15歳のお子さんで叢生(歯の大きさと、歯が並ぶアゴの大きさとのアンバランスにより、歯が並びきらず何箇所かで重なっている状態)が認められる割合は、平成11年に17.2%だったのが、平成28年には27.6%と増加を示しており、その要因の一つとして、過去と比べ、食品の軟食化により内側に歯が傾くことで、歯並びの幅が狭くなっていることが報告されています(2010)[2]。
歯並びに対する咀嚼機能の影響を成人女性で検証した報告では(2006)[3]、咬合力が強く、前後左右にすり動かす噛み方(グラインディング咀嚼)の被験者は、歯の生える角度が変化し、歯並びの幅が広くなる可能性が認められています。
ガム咀嚼による小学生の歯並びへの影響を評価した研究が2報あり、平均年齢10.5歳のお子さんに咀嚼トレーニングとして、1か月間1日2回朝、夕食後10分間ガムを噛んでもらった所、グラインディング咀嚼に噛み方が変化し、咬合力の増加が認められました(2008)[4]。さらには、平均年齢11.2歳のお子さんに同様のトレーニングを3か月間行ってもらった所、グラインディング咀嚼への変化に加え、歯の生え方(上下顎第一臼歯の植立)に影響を与え、歯並びの幅の増加が認められました(2010)[5]。よって、ガムを継続的に噛むことで、お子さんの噛み方が改善され、歯並びにも影響する可能性があると考えられます。
【引用文献】
[1] 厚生労働省「歯科疾患実態調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-17.html
[2] Kasai K et al. 成長期児童における歯列弓形態の成長変化に関する研究. 日本矯正歯科学会雑誌. 2010; 69(1): 23-35.
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007880290
[3] Hayashi R et al. Relationship between masticatory function, dental arch width, and bucco-lingual inclination of the first molars. Orthod. Waves. 2006; 65: 120-126.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1344024106000665
[4] 根岸ら. 硬性ガムトレーニングが混合歯列期児童の咀嚼能力に及ぼす影響. Orthod. Waves-Jpn. Ed. 2008; 67(3): 132-138.
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007008440
[5] 根岸ら. 硬性ガムトレーニングが混合歯列期児童の咀嚼運動および第一大臼歯植立に与える影響. Orthod. Waves-Jpn. Ed. 2010; 69(3): 156-162.
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10630971
噛む力と運動能力に関しては、子供や大人での調査研究が報告されています。小学生において、新体力テストに用いられている握力、上体起こし長座体前屈、反復横跳びおよびボール投げ等の基本的な運動能力指標と噛む力の関連や(2011)[1]、若い女性においても噛む力が反応時間や握力、全身持久力と関連するという報告がなされています(2018)[2]。
ガムを噛むことと運動能力の向上に関しての研究も多くの日本人研究者によって報告されてきました。例えば、大学生においてガムを1日3回、2粒を20分、30日間噛むことで握力、50mの区間タイムにおいてパフォーマンスが向上すると報告があります(2019)[3]。他にも、ガム咀嚼を行うことで反応速度が向上し、注意力に関係している前帯状皮質と左の前頭葉の活性を高めるという報告もあります(2013)[4]。
また、プロサッカー選手、バレーボール選手、ハンドボール選手を用いて、それぞれ咀嚼筋とキック、スパイク、シュートの強弱との関連性について検討したところ、ボールを強く蹴った時、強くスパイクを打った時、強くシュートを放った時により咀嚼筋も強く動作し、スポーツにおける全身運動に咀嚼筋が関与している可能性が示唆されています(1994)[5], (1994)[6]。
他にも様々なスポーツにおいて、ガムや咬合力と運動能力の関連性について研究が進められています。
【引用文献】
[1] Kibayashi M. The relationships among child’s ability of masitication,dietary behavior,and physical fitness,J Dent Hyg. 2011; 9: 127-131.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1601-5037.2010.00458.x
[2]石山. 健康青年女性の咬合力と体力の関連. 日本咀嚼学会雑誌. 2018; 18(1): 22-28.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshaku1991/18/1/18_1_22/_article
[3] 木林ら. チューインガムトレーニングが咀嚼力および運動能力に及ぼす影響の検討. 食生活研究会誌. 2019; 39(3): 48-57.
http://syokuken.org/39-3.html
[4] Hirano Y et al. Effects of chewing on cognitive processing speed. Brain and Cognition. 2013; 81(3): 376-381.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S027826261200173X
[5] 大川ら. 咀嚼筋機能に関するスポーツ医学的解析―プロサッカー選手の場合―. 日本顎口腔機能学会雑誌. 1994; 1(1): 165-173.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sgf1994/1/1/1_1_165/_article/-char/ja/
[6] 大川ら. 咀嚼筋機能に関するスポーツ医学的解析―バレーボール及びハンドボール選手の場合―. 日本顎口腔機能学会雑誌. 1994; 1(1): 33-44.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sgf1994/1/1/1_1_33/_article/-char/ja/
よく噛んで食べることは健康にいいと言われており、肥満とも関係することが報告されています。例えば、愛知県に住む成人を対象とした調査研究では、早食いの人はBMI(Body Mass Index)が高く、20歳時点からのBMI増加量も大きいことが明らかとなっています[1], (2006)[2]。一方、ガムは噛む回数が多い食品であり(2017)[3]、肥満・ダイエットに関する研究が複数報告されています。食事と関係する研究としては、肥満または肥満傾向にある女性を対象に毎食前にガムを10分間、9週間継続して噛んでもらった研究があり(2016)[4]、しっかりガム咀嚼を実施したグループでは研究前後で体重、体脂肪率、腹部脂肪の減少が認められています。また、健康な男性を対象に、早食い、ゆっくり食事をした後に15分間ガムを噛んでもらうと、どちらの条件でも食事誘発の体熱産生(食後に体が熱くなる現象)が高まり、カロリー消費が増加する結果が得られており、体重管理に役立つと結論付けられています(2016)[5]。
また、ガムを噛むこと自体がカロリー消費を高めることも報告されており、健康な方に座りながらガムを噛んでもらったところ、ただ座っているだけよりカロリー消費が19%増加することが認められています(1999)[6]。さらには、運動時のガム咀嚼の影響も報告されており、健康な成人男女にガムを歩行時に噛んでもらうと、歩く速度が早くなり、カロリー消費・脂肪燃焼が高まる作用が認められています(2019)[7]。よって、ガムを日常の中で効果的に噛んでもらうことで、肥満防止や体重コントロールに役立つ可能性があると考えられます。
【引用文献】
[1] 厚生労働省「e-ヘルスネット:早食いと肥満の関係 -食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-10-002.html
[2] Otsuka R et al. Eating fast leads to obesity: findings based on self-administered questionnaires among middle-aged Japanese men and women. J. Epidemiol. 2006; 16(3): 117-124.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/16/3/16_3_117/_article/-char/ja/
[3] 坂ノ下ら. チューインガムの咀嚼回数および咀嚼頻度について. 日本咀嚼学会雑誌. 2017; 27(1): 10-17.
https://mol.medicalonline.jp/archive/search?jo=dr3masti&ye=2017&vo=27&issue=1
[4] Inoue H et al. Effect of Ongoing Gum Chewing before Food Intake in Obese/Overweight Young Adult Japanese Women: A Before-After Trial. Journal of Japanese Society for Masticatory Science and Health Promotion. 2016; 26(2): 62-69.
https://mol.medicalonline.jp/archive/search?jo=dr3masti&ye=2016&vo=26&nu=2
[5] Hamada Y et al. Effect of Postprandial Gum Chewing on Diet-Induced Thermogenesis. Obesity. 2016; 24: 878-885.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26887536/
[6] Levine J et al. The Energy Expended in Chewing Gum. The New England Journal of Medicine. 1999; 30: 2100.
https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJM199912303412718
[7] Kanno S et al. Gum chewing while walking increases fat oxidation and energy expenditure. J. Phys. Ther. Sci. 2019; 31: 435-439.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpts/31/5/31_jpts-2018-440/_article/-char/ja
チューインガムを噛むことによるインスリンや血糖値、ホルモンの増減に関する研究が国内外で行われています。
国内において、松田ら(2002)[1]は、19名の被験者を対象に、終夜絶食後、甘味と香料の配合されていないガムベースを15分咀嚼してもらい、75gグルコース経口負荷(75gOGTT)後、2時間安静時に採血して、継時的に血中のインスリン量を測定した結果、75gOGTT後30分のインスリン量について、チューインガムを咀嚼しない場合と比較して、インスリン分泌が有意に多いことを報告しています。さらに松田ら(2006)[2]は、19名の被験者を対象に、糖入りチューインガムを15分間咀嚼してもらい、同様に75gOGTTの糖負荷した結果、チューインガム咀嚼した際は、チューインガムを噛まなかった場合と比較して、血糖とインスリンが迅速に上昇し、下降も速いことを確認しています。この2つの研究より、チューインガムを噛むことにより、インスリン分泌が素早く起こり、血糖値も食後直ぐに下がることにより、身体への負担が軽くなることが予想されます。
海外では、Xuら(2015)[3]の研究において、12名の被験者に対して、終夜絶食後1.4gシュガーレスガムを2分ごとに80回咀嚼、30分間実施した結果、咀嚼30分後のGLP-1が、チューインガム咀嚼により有意に上昇することが認められました。加えて、被験者の満足感について、チューインガム咀嚼した際に有意に高くなりました。GLP-1は、インスリンの分泌を促進する「インクレチン」と呼ばれるホルモンの一種です。GLP-1は、そのほか、摂取した食べものが胃から排出されるのを遅らせる作用や、食欲を抑える作用など、肥満抑制に期待される効果もあります。チューインガム咀嚼によるGLP-1分泌促進は、国内のTakaharaら(2020)[4]の研究でも確認されており、16人の成人男性被験者を対象に無味のカロリーのないチューインガムを15分間噛んでもらった後に、米飯200gを食べた際、米飯を食べる前にチューインガムを噛まなかった時と比較して、食後30分、60分のGLP-1分泌量が有意に上昇していることが確認されています。この研究では、チューインガム咀嚼による食直後の血糖値の有意な低下、食後15分のインスリン分泌量の有意な上昇も認められています。
チューインガムを食べることにより食事量が減少することも報告されており、Melansonら(2017)[5]は、被験者33名を対象に、朝食と昼食の間にチューインガムを20分間、2回噛んでもらった後、昼食を量について自由にして食べてもらったところ、チューインガムを食べた際は、昼食量が有意に減少することを確認しています。
チューインガムを噛むことにより、内臓における負担も軽減し、食事量も抑えることができそうだということが、研究で示唆されています。今後も様々な報告が挙がってくることが期待されます。
【引用文献】
[1] 松田ら. 咀嚼のインスリン分泌に及ぼす影響 (第1報). 日本咀嚼学会雑誌. 2002; 11(2): 141-145.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshaku1991/11/2/11_2_141/_article/-char/ja/
[2] 松田秀人ら. 咀嚼のインスリン分泌に及ぼす影響 (第3報). 日本咀嚼学会雑誌. 2006; 16(2): 48-54.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshaku1991/16/2/16_2_48/_article/-char/ja/
[3] Xu J et al. The effect of gum chewing on blood GLP-1 concentration in fasted, healthy, non-obese men. Endocrine. 2015; 50(1): 93-98.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25758865
[4] Takahara M, Fukuda M, Matsuzawa Y, Shimomura E. Effect of tasteless calorie-free gum chewing before meal on postprandial plasma glucose, insulin, glucagon, and gastrointestinal hormones in Japanese men without diagnosed glucose metabolism disorder: a pilot randomized crossover trial. Diabetol Int. 2020; https://doi.org/10.1007/s13340-020-00435-9
https://doi.org/10.1007/s13340-020-00435-9
[5] Melanson KJ et al. Chewing gum decreases energy intake at lunch following a controlled breakfast. Appetite. 2017; 118(1): 1-7.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28733151
生産数量(前年比) | 生産金額(前年比) | 小売金額(前年比) | |
---|---|---|---|
平成元年(1989) | 36000 (107.5) | 850 (114.9) | 1210 (114.2) |
2年(1990) | 38000 (105.6) | 960 (112.9) | 1360 (112.4) |
3年(1991) | 43000 (113.2) | 1100 (114.6) | 1560 (114.7) |
4年(1992) | 45000 (104.7) | 1155 (105.0) | 1640 (105.1) |
5年(1993) | 46000 (102.2) | 1200 (103.9) | 1700 (103.7) |
6年(1994) | 45300 (98.5) | 1169 (97.4) | 1670 (98.2) |
7年(1995) | 45500 (100.4) | 1192 (102.0) | 1703 (102.0) |
8年(1996) | 44200 (97.1) | 1158 (97.1) | 1654(97.1) |
9年(1997) | 45600 (103.2) | 1205 (104.1) | 1721 (104.1) |
10年(1998) | 45600 (100.0) | 1213 (100. 7) | 1733 (100.7) |
11年(1999) | 44700 (98.0) | 1190 (98.1) | 1700 (98.1) |
12年(2000) | 43600 (97.5) | 1161 (97.6) | 1660 (97.6) |
13年(2001) | 43600 (100.0) | 1173 (101.0) | 1676 (101.0) |
14年(2002) | 44000 (100.9) | 1207 (102.9) | 1724 (102.9) |
15年(2003) | 45800 (104.1) | 1310 (108.5) | 1871 (108.5) |
16年(2004) | 46100 (100.7) | 1317 (100.5) | 1881 (100.5) |
17年(2005) | 44300 (96.1) | 1278 (97.0) | 1826 (97.1) |
18年(2006) | 42600 (96.2) | 1172 (97.3) | 1723 (94.4) |
19年(2007) | 41240 (96.8) | 1140 (97.3) | 1677 (97.3) |
20年(2008) | 39140 (94.9) | 1099 (96.4) | 1616 (96.4) |
21年(2009) | 38010 (97.1) | 1070 (97.4) | 1580 (97.8) |
22年(2010) | 37590 (98.9) | 1050 (98.1) | 1540 (97.5) |
23年(2011) | 35870 (95.4) | 982 (93.5) | 1435 (93.2) |
24年(2012) | 33130 (92.4) | 910 (92.7) | 1325 (92.3) |
25年(2013) | 30220 (91.2) | 825 (90.7) | 1220 (92.1) |
26年(2014) | 29020 (96.0) | 778 (94.3) | 1150 (94.3) |
27年(2015) | 27780 (95. 7) | 751 (96.5) | 1113 (96.8) |
28年(2016) | 26670 (96.0) | 715 (95.2) | 1058 (95.1) |
29年(2017) | 25200 (94.5) | 680 (95.1) | 1005 (95.0) |
30年(2018) | 24350 (96.6) | 655 (96.3) | 970 (96.5) |
令和元年(2019) | 23,300(95.7) | 630(96.2) | 930(95.9) |
2年(2020) | 19,000(81.5) | 510(81.0) | 755(81.2) |
3年(2021) | 18950 (99.7) | 510 (100.0) | 755 (100.0) |
4年(2022) | 17870 (94.3) | 480 (94.1) | 710 (94.0) |
5年(2023) | 19000 (106.3) | 510 (106.3) | 755 (106.3) |